2019.02.01
director of photography / photographer
レコードメーカーのハウスデザイナーを経て1995年、フォトグラファーに。
キューピーマヨネーズをはじめ、化粧品等多くの広告写真・CM作品を撮影する。
ニューヨーク、ロンドン、ドイツでADC受賞。キューピーマヨネーズCMでは日本ADC受賞。
初めて人工光を美しいと思った。キューピーマヨネーズspeedは100%実写だったがオンエアを見た人はみなCGですか?と言っていた。人工光が自然以上の自然を表現していた。スーパーナチュラル。今考えるとそれはバーチャルの典型だった。想像のコンテ(イメージデザイン)より仕上がりが遥か先に行った経験は初めてだった。石田東がグラフィックデザイナーだった事は後で知った。自分のデザインをベストの表現にするためには自分で撮影した方がよいと思うのは自然な流れだろう。彼は人物もスチールライフのように撮る。その静止画は脳の中に入ると動き出す。動を前提とした静の作り込みをしている。究極の動きを表現するのは1枚の写真ではないかと思ってきた。石田の写真は一瞬後にはどうなっているのか連想が人によってさまざまだ。作家のイメージは見る人のイメージの引き金となり無数のイメージに変貌する。彼の撮る映像は映画『アメリ』の夢に似ている。眠りに落ちると語り、動き始める人形たち。人は静物も動けば良いと潜在的に思っている。子供の心を失っていない人ほどイメージは具体的だ。彼とバハ・カリフォルニアに行った。砂漠と海、サボテンとイグアナ、陽光と熱風。夏のバハは美しかった。しかし彼の写真は肉眼で見たバハよりはるかに美しかった。カメラは肉眼に一番近いものとして発明された。写真が肉眼で見るより綺麗だということは、やはりバーチャルなのだ。これは彼が目の前にあるものを肉眼とは別の目でみて、その別の目にあわせて計算し写真に表現しているのではないか。彼と映画を撮ってみたいと思っている人は多い。彼のムービーのアングルは微妙だ。一件、とくに変わった視角には見えないが試写のときにそのみずみずしさが見えてくる。僕たちは光だけでなくカメラポジションとアングルが美しさを左右する事を理解する。その微妙な部分が肉眼では見る事ができない世界を開いていくのだろう。 (クリエイティブディレクター秋山晶 コマーシャルフォト)
写真は薬品の化学反応を採用した一種の合成物質だった。石田東の写真を見るといつもそんな事を考える。なにも彼が特別な液体をマジシャンのように駆使しプリントするようなフォトグラファーだと言うのではない。その写真に湛えられた独自の張りつめた雰囲気をケミカルに思ってしまうのだろうか。場所も時間も匿名化されてしまうコントロール。人物はストップモーションをかけられ、息をのみ、風は風速ゼロに。あらゆる音が吸い込まれてなくなった静謐な瞬間の中に光だけが雄弁にたっぷりと回っているような。東京の下町生まれの彼がそんなクールスタイルを円熟させているのだから面白い。レコードメーカーのハウスデザイナーから転身してフォトグラファーになった履歴も有名。ファッションや音楽イメージでエポックとなる仕事を数多く手掛けてきた。(新世代の写真家データファイル 河出書房刊)